導線に電流を流すと、その周囲には磁界が生じます。電流の流れ方を直線、円形、らせん状へ変えると、磁界の向きや強さも変化します。この性質は電磁石や変圧器だけでなく、MRI装置の主磁石・傾斜磁場コイル・RFコイルを理解するための基礎になります。
この記事では、電流と磁界の関係、右ねじの法則、直線電流・円形電流・ソレノイドがつくる磁界、アンペールの周回積分の法則、MRIとの関係を、公式と図を使って順番に整理します。
電流がつくる磁界
電流とは、電荷が移動する現象です。導線に電流を流すと、導線の周囲に磁気的な力が働く空間が生じます。この空間を磁界(磁場)といいます。
電流の向きは、正電荷が移動する向きとして定められています。金属導線の中で実際に移動する電子の向きは、電流の向きと反対です。磁界の向きを判断するときは、電子の移動方向ではなく電流の向きを使う点に注意してください。
磁石がつくる磁界と同様に、電流がつくる磁界も磁力線で表せます。磁力線は途中で始まったり終わったりせず、全体として閉じた曲線になります。場の考え方を復習したい方は、電界(電場)と電気力線も参考にしてください。
磁界の強さHと磁束密度B
磁界を表す量として、医用工学では磁界の強さHと磁束密度Bが使われます。
- 磁界の強さH:電流など、磁界をつくる原因の大きさを表す。単位はA/m
- 磁束密度B:その場所に実際に生じている磁界の大きさを表す。単位はT(テスラ)
磁化が磁界に比例する物質では、BとHの間に次の関係があります。
$$B=\mu H$$
μ[H/m]は物質の透磁率です。真空中ではμ=μ0であり、物質中ではμ=μ0μrと表せます。μrは比透磁率です。
直線電流がつくる磁界
右ねじの法則
十分に長い直線導線へ電流を流すと、導線を中心とする同心円状の磁界が生じます。磁界の向きは右ねじの法則、または右手の法則で判断します。
- 右手の親指:電流Iの向き
- 右手の4本の指が曲がる向き:磁界Bの向き

図1 直線電流がつくる磁界
磁束密度の大きさ
透磁率μの一様な媒質中で、十分に長い直線導線に電流I[A]が流れているとき、導線から距離r[m]の点における磁束密度B[T]は次の式で表されます。
$$B=\frac{\mu I}{2\pi r}$$
- 電流Iが大きいほど、磁束密度Bは大きくなる
- 導線からの距離rが大きいほど、磁束密度Bは小さくなる
- 距離rを2倍にすると、磁束密度Bは1/2になる
計算例
真空中で、10 Aの電流が流れる十分に長い直線導線から5.0 cm離れた点の磁束密度Bを求めます。計算ではμ0≒4π×10−7 H/m、5.0 cm=5.0×10−2 mとします。
$$B=\frac{4\pi\times10^{-7}\times10}{2\pi\times5.0\times10^{-2}}=4.0\times10^{-5}\ \mathrm{T}$$
答えは、B=4.0×10−5 T=40 μTです。cmをmに直してから代入することが重要です。
円形電流がつくる磁界
導線を円形にすると、導線の各部分がつくる磁界は円の中心で同じ向きになり、互いに強め合います。円形コイルを右手で握り、4本の指を電流の向きに沿わせると、親指がコイル中心の磁界の向きを示します。

図2 円形電流が中心につくる磁界
半径a[m]、巻数Nの円形コイルへ電流I[A]を流したとき、コイル中心の磁束密度B[T]は次の式で表されます。
$$B=\frac{\mu NI}{2a}$$
- 電流Iを大きくすると、Bは大きくなる
- 巻数Nを増やすと、各巻線の磁界が重なるためBは大きくなる
- コイル半径aを大きくすると、中心のBは小さくなる
この式は円の中心における磁束密度の式です。コイルの中心から離れた点では、磁束密度の大きさが異なります。
ソレノイドがつくる磁界
導線を円筒状に何回も巻いたコイルをソレノイドといいます。十分に長いソレノイドでは、内部の磁力線がほぼ平行になり、中心付近にほぼ一様な磁界が生じます。外側の磁界は弱く、磁力線の形は棒磁石によく似ています。

図3 ソレノイドがつくる磁界
長さℓ[m]、巻数Nの十分に長いソレノイドへ電流I[A]を流すと、内部の磁束密度B[T]は次の式で表されます。
$$B=\mu\frac{N}{\ell}I=\mu nI$$
n=N/ℓは単位長さあたりの巻数です。巻数N、電流I、透磁率μが大きいほどBは大きくなります。同じ巻数Nなら、長さℓが大きいほど単位長さあたりの巻数が減るため、Bは小さくなります。
ソレノイドを右手で握り、4本の指をコイル電流の向きに沿わせると、親指がソレノイド内部の磁界の向き、すなわちN極の向きを示します。
直線電流・円形電流・ソレノイドの比較
| 電流の形 | 磁束密度B | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 十分に長い直線導線 | B=μI/(2πr) | 導線を中心とする同心円状。 Bはrに反比例 |
| 半径a、N巻きの円形コイルの中心 | B=μNI/(2a) | 中心で磁界が重なって強め合う |
| 長さℓ、N巻きの十分に長いソレノイド内部 | B=μNI/ℓ=μnI | 中心付近にほぼ一様な磁界が生じる |
3つの式は、いずれも電流Iと透磁率μに比例します。円形コイルとソレノイドでは、巻数Nを増やすと磁界が強くなります。一方、長さを表す記号と位置が異なるため、r、a、ℓを混同しないようにしてください。
国家試験で押さえるポイント
- 磁界の向きは、電子の移動方向ではなく電流の向きを基準に右手で判断します
- 直線電流の磁界は同心円状で、BはIに比例し、距離rに反比例します
- 円形コイル中心のBは巻数Nと電流Iに比例し、半径aに反比例します
- 十分に長いソレノイド内部のBは、単位長さあたりの巻数nと電流Iに比例します
- 直線導線では親指が電流、4本の指が磁界です。コイルでは4本の指が電流、親指が中心軸方向の磁界です
- 磁束密度Bの単位はT、磁界の強さHの単位はA/mです
確認問題
問題:真空中の十分に長い直線導線について、電流を2倍、導線からの距離を4倍にしたとき、磁束密度Bはもとの何倍になるでしょうか。
B=μ0I/(2πr)より、BはIに比例し、rに反比例します。
$$\frac{B’}{B}=\frac{2I}{4r}\div\frac{I}{r}=\frac{1}{2}$$
答えは1/2倍です。電流を2倍にする効果より、距離を4倍にする効果のほうが大きいため、磁束密度は半分になります。
まとめ
- 電流が流れると、その周囲に磁界が生じます。
- 直線電流がつくる磁界は同心円状で、右ねじの法則から向きを判断します。
- 十分に長い直線導線ではB=μI/(2πr)です。
- 円形コイルの中心ではB=μNI/(2a)です。
- 十分に長いソレノイド内部ではB=μNI/ℓ=μnIです。
