コンデンサの極板間に誘電体を入れると、静電容量は大きくなります。誘電体は電流を流しにくい絶縁物なのに、なぜ蓄えられる電荷が増えるのでしょうか。
ポイントは、誘電体の内部で起こる分極と、それによってコンデンサ内部の電界が弱くなることです。今回は、誘電体が静電容量に与える影響を、平行板コンデンサの式、電池を接続した場合と切り離した場合の違い、医用工学との関係まで順番に解説します。
静電容量とは
コンデンサは、2枚の導体にプラスとマイナスの電荷を分けて蓄える部品です。コンデンサがどれくらい電荷を蓄えられるかを表す量を静電容量(電気容量)といい、記号C、単位F(ファラド)で表します。
極板に蓄えられた電荷をQ[C]、極板間の電圧をV[V]とすると、静電容量は次の式で表されます。
$$ C=\frac{Q}{V} $$
この式から、同じ電圧でより多くの電荷を蓄えられるコンデンサほど、静電容量が大きいことがわかります。
極板面積をS[m2]、極板間距離をd[m]とする真空中の平行板コンデンサでは、静電容量C0は次のようになります。
$$ C_0=\varepsilon_0\frac{S}{d} $$
- ε0:真空の誘電率(約8.85×10−12 F/m)
- S:極板面積
- d:極板間距離
つまり、極板面積Sが大きいほど静電容量は大きくなり、極板間距離dが広いほど静電容量は小さくなります。
誘電体を入れると静電容量が大きくなる
誘電体とは、外部から電界を加えると内部で分極が起こる絶縁物です。紙、ガラス、セラミック、樹脂などが代表例です。

図1 誘電体の分極と静電容量の変化
誘電体をプラス極板とマイナス極板の間に入れると、誘電体を構成する原子や分子の正負の電荷がわずかにずれます。その結果、プラス極板に近い誘電体表面にはマイナスの束縛電荷が、マイナス極板に近い表面にはプラスの束縛電荷が現れます。この現象が分極です。
分極によって生じる電界は、極板がつくる元の電界とは反対向きです。そのため、誘電体を入れるとコンデンサ内部の合成電界が弱くなります。電界Eと極板間電圧Vの関係はV=Edなので、電荷Qが同じなら電界が弱くなるほど電圧Vも小さくなります。
C=Q/Vより、同じ電荷Qに対して電圧Vが小さくなると静電容量Cは大きくなります。これが、誘電体によって静電容量が増える理由です。
比誘電率を使った公式
物質が真空と比べてどれくらい分極しやすいかを表す量を比誘電率εrといいます。誘電体が極板間をすき間なく満たしている平行板コンデンサでは、次の式が成り立ちます。
$$ C=\varepsilon\frac{S}{d}=\varepsilon_r\varepsilon_0\frac{S}{d}=\varepsilon_r C_0 $$
したがって、比誘電率εrの誘電体を極板間全体に入れると、静電容量はεr倍になります。真空の比誘電率は1で、通常の誘電体の比誘電率は1より大きい値です。
ただし、誘電体が極板間の一部だけを満たす場合は、入れ方によって直列コンデンサまたは並列コンデンサとして考える必要があります。単純に全体がεr倍になるわけではありません。
電池を切り離す場合と接続したままの場合
誘電体を入れる問題では、電荷Qと電圧Vのどちらが一定かを最初に確認することが重要です。

図2 電荷一定と電圧一定での変化
電池から切り離してから誘電体を入れる
電池から切り離したコンデンサには、電荷が出入りする経路がありません。そのため、極板の電荷Qは一定です。静電容量がεr倍になると、V=Q/Cより電圧は1/εr倍になります。
- 静電容量C:εr倍
- 電荷Q:変化しない
- 電圧V:1/εr倍
- 静電エネルギーU=Q2/(2C):1/εr倍
電池につないだまま誘電体を入れる
電池につながっている場合、極板間電圧Vは電池によって一定に保たれます。静電容量がεr倍になると、Q=CVより電池から極板へ電荷が移動し、電荷Qもεr倍になります。
- 静電容量C:εr倍
- 電圧V:変化しない
- 電荷Q:εr倍
- 静電エネルギーU=CV2/2:εr倍
静電容量Cはどちらの場合もεr倍です。変化の仕方が異なるのは、電池を切り離すとQが一定、つないだままではVが一定になるためです。
計算例
静電容量20 pFのコンデンサを12 Vで充電し、比誘電率4.0の誘電体を極板間全体に入れる場合を考えます。
誘電体を入れた後の静電容量は、
$$ C=\varepsilon_r C_0=4.0\times20\ \mathrm{pF}=80\ \mathrm{pF} $$
となります。
電池から切り離した場合
挿入前の電荷はQ=C0V0=20 pF×12 V=240 pCで、電池を切り離した後も変化しません。したがって挿入後の電圧は、
$$ V=\frac{Q}{C}=\frac{240\ \mathrm{pC}}{80\ \mathrm{pF}}=3.0\ \mathrm{V} $$
となり、元の12 Vの1/4になります。
電池につないだままの場合
電圧は12 Vのままなので、挿入後の電荷はQ=CV=80 pF×12 V=960 pCです。元の240 pCの4倍になります。
国家試験で押さえたいポイント
- 静電容量はC=Q/V、単位はF(ファラド)です
- 真空中の平行板コンデンサはC0=ε0S/dです
- 比誘電率εrの誘電体が極板間全体を満たすと、C=εrC0になります
- 誘電体の分極が元の電界を弱めるため、静電容量が増加します
- 電池から切り離した後はQ一定、電池につないだままではV一定です
- 電池から切り離した場合、VとUは1/εr倍になります
- 電池につないだままの場合、QとUはεr倍になります
- 比誘電率と絶縁耐力は別の性質です
電界と電気力線の復習には、「電界(電場)」と「電気力線」の記事も確認してください。
まずは「誘電体が分極する → 電界が弱くなる → 同じ電荷に対する電圧が下がる → C=Q/Vより静電容量が大きくなる」という流れをイメージできるようにしておきましょう。

