放射能とは?放射線・放射性物質との違い

放射能とは何かを学ぶひよこ研究員のイラスト 放射線物理学

「放射能」「放射線」「放射性物質」は似た言葉ですが、それぞれ意味が異なります。ニュースや教科書でよく目にする言葉だからこそ、混同したまま覚えてしまう方も多いのではないでしょうか。

今回は、放射能とは何かを中心に、放射線・放射性物質との違い、ベクレル(Bq)・グレイ(Gy)・シーベルト(Sv)の使い分け、半減期までをわかりやすく解説します。

放射能とは

放射能とは、放射性物質が放射線を出す能力や性質のことです。

放射性物質の原子核は、エネルギー的に不安定な状態にあります。そのため、原子核はα線やβ線、γ線などを放出し、より安定な状態へ変化しようとします。この原子核の変化を放射性崩壊(放射性壊変)といいます。

日常会話では「放射能が漏れた」と表現されることがありますが、厳密には、漏れたり広がったりするものは放射性物質です。放射性物質が持っている能力が放射能であり、そこから出てくるものが放射線です。

放射性物質・放射能・放射線の違いを示す図

図1:放射性物質・放射能・放射線の違い

放射性物質・放射能・放射線の違い

放射性物質

放射性物質は、放射線を出す能力を持つ物質です。例えば、ヨウ素131、セシウム137、コバルト60などが挙げられます。放射性物質を構成する不安定な原子核は放射性核種とも呼ばれます。

放射能

放射能は、放射性物質が放射線を出す能力です。目に見える物質そのものではなく、物質が持つ性質を表します。放射能の強さはベクレル(Bq)で表します。

放射線

放射線は、エネルギーを持って空間を伝わる粒子や電磁波です。放射性物質から放出されるものだけでなく、X線装置などで人工的に発生させるものもあります。代表的なものにはα線、β線、γ線、X線、中性子線などがあります。

α線・β線・γ線が原子核から発生する仕組みは、「α線、β線、γ線の発生」の記事で詳しく解説しています。

この3つの言葉は、電球に例えると整理しやすくなります。電球が放射性物質、光を出す能力が放射能、実際に出てくる光が放射線に相当します。

放射能と放射線に関係する単位

ベクレル・グレイ・シーベルトの違いを示す図

図2:ベクレル・グレイ・シーベルトの違い

ベクレル(Bq)

ベクレルは放射能の強さを表す単位です。1 Bqは、1秒間に1個の原子核が壊変する放射能を意味します。100 Bqであれば、平均して1秒間に100個の原子核が壊変していることになります。

食品や土壌などでは、1 kgあたりに含まれる放射能をBq/kgで表すことがあります。

グレイ(Gy)

グレイは、放射線が物質に与えたエネルギーの量である吸収線量の単位です。1 Gyは、物質1 kgあたりに1 J(ジュール)のエネルギーが吸収されたことを表します。

シーベルト(Sv)

シーベルトは、放射線の種類や人体の組織・臓器による影響の違いを考慮して、被ばくの大きさを表すために用いられる単位です。放射線防護では、等価線量や実効線量などに使用されます。Bqは放射線を出す側、Gyは物質が吸収した量、Svは人体への影響を考慮した量と覚えておくと整理しやすくなります。

なお、Bqの値だけからSvを直接求めることはできません放射性核種の種類、放出される放射線のエネルギー、体外・体内のどちらから受けるか、距離、時間などによって人体が受ける線量は変化します。

半減期と放射能の減り方

放射性物質の原子核は時間とともに壊変していくため、放射能は少しずつ減少します。放射能の強さが最初の半分になるまでの時間を物理学的半減期といいます。

半減期ごとに放射能が2分の1へ減少する様子を示すグラフ

図3:半減期と放射能の減り方

1半減期が経過すると1/2、2半減期では1/4、3半減期では1/8になります。半減期を迎えた瞬間に放射能がゼロになるわけではない点に注意してください。

半減期は核種ごとに決まっておりヨウ素131は約8日テクネチウム99mは約6時間セシウム137は約30年です。核種によって非常に短いものから長いものまであります。

体内に取り込まれた放射性物質については、排泄や代謝によって量が半分になるまでの時間生物学的半減期といいます。物理学的半減期と生物学的半減期の両方を考慮したものが実効半減期です。

放射能の測定で混同しやすいポイント

Bqが大きいほど、そのまま人体影響が大きいわけではない

Bqは原子核が壊変する回数を表す単位です。同じBqでも、放射線の種類やエネルギー、体内での分布、被ばくする時間などによって人体への影響は異なります。そのため、BqとSvは同じ尺度として単純に比較できません。

サーベイメータのμSv/hは放射能そのものではない

サーベイメータで表示されるμSv/hは、多くの場合、その場所で1時間あたりに受ける線量の目安である線量率です。放射性物質の放射能を表すBqとは意味が異なります。

X線を出す装置が必ず放射性物質を含むわけではない

診断用X線装置では、装置に電気を流して電子を加速し、標的に衝突させることでX線を発生させます。通常、電源を切ればX線は発生しません。放射性物質が自発的に放射線を出す仕組みとは異なります。詳しくは「X線の種類と発生方法」も確認してください。

国家試験で押さえたいポイント

  • 放射性物質は、放射線を出す能力を持つ物質
  • 放射能は、放射性物質が放射線を出す能力や性質
  • 放射線は、放射性物質から出てくる粒子や電磁波
  • 放射能の単位はベクレル(Bq)
  • 吸収線量の単位はグレイ(Gy)
  • 人体への影響を考慮した線量にはシーベルト(Sv)を用いる
  • 物理学的半減期は核種ごとに決まっている
  • 半減期が経過するたびに放射能は1/2になるが、突然ゼロにはならない