X線の種類と発生方法

放射線物理学

X線は、ヴィルヘルム・レントゲンによって発見された 電磁波 です。

最初に発見されてから100年ほどしか経っていませんが、医療現場(レントゲン検査など)をはじめ様々な分野で利用されています。

X線は特性X線と連続X線(制動X線)と呼ばれるものにわかれ、それぞれ発生方法が異なります。

X線とは?

X線は、1895年11月にヴィルヘルム・レントゲンによって発見されました。

X線は電磁波の仲間 なので、私たちが日常で使用している電子レンジの赤外線や、携帯電話の電波などと同じ部類になります(図1)。

電磁波の分類

図1 電磁波の分類

電磁波はエネルギーの強さで分類されます。

X線の発生

レントゲン検査などで使用されるX線管(X線の発生する場所)は以下の図のように、陰極のフィラメント陽極のターゲット から構成されています(図2)。

X線の発生

図2 X線管の構造

X線の発生には、以下の作用が関わってきます。

① 陰極から発生した電子がターゲットに衝突した際、ターゲットを構成する原子の
  軌道電子に衝突する(図3左)。

② 陰極から発生した電子がターゲットを構成する原子を通過する際、
  クーロン力(電気の力)により曲げられる(図3右)。

図3 ターゲット原子に衝突した際の電子の動き

電子がターゲットで起こす反応の違いにより、特性X線と連続X線の2種類に分かれます

特性X線の発生原理

特性X線は、以下の流れで発生します。

ターゲット原子に入射した電子が、原子を構成する軌道電子に衝突する。
これにより、衝突された軌道電子は原子の外に飛ばされる(図4)。
軌道電子が外からの力(今回は電子の衝突)によって、吹き飛ばされることを 電離 と呼びます。

電離(イオン化)

図4 入射電子による原子の電離

電離が起こると、吹き飛ばされた軌道電子の場所空席 になる。
上の軌道にいる電子が、空席を埋めるように 遷移(移動)します(図5)。

軌道電子が内側の空席に遷移した時に、エネルギーを電磁波の形で放出 します(図5右)。
このときに発生する電磁波を 特性X線 と呼びます。

特性X線の発生

図5 特性X線の発生

「なぜ電磁波の形でエネルギーを放出するのか」については、別の記事で解説します。

連続X線の発生原理

連続X線は 制動X線 とも呼ばれ、以下の流れで発生します。

ターゲット原子に入射した電子が、真っ直ぐ進もうとする(図6左)。
電子はマイナス、原子核はプラスの電荷をもっているため、電子はまっすぐ進めず原子核の方へ引かれて曲げられてしまう。(図6右)。
このとき働く電気的な力を クーロン力(同じ電荷同士では斥力、異なる電荷同士では引力が働く) といいます。

図6 入射電子に働くクーロン力

電子と原子核にクーロン力が働いた結果、電子には制動力がかかり、持っていたエネルギーを捨てて曲げられます
この時、捨てたエネルギーを電磁波の形で放出 します(図7)。
このときに発生する電磁波を 連続X線(または制動X線) と呼びます。

図7 連続X線の発生

「原子核がプラスの電荷をもつ理由」、「電子の曲げられる大きさ」、「クーロン力」については、別の記事で解説します。

まとめ

  1. X線は電磁波に分類されます。
  2. X線は発生方法の違いにより、特性X線と連続X線(制動X線)にわけられます。

今回は特性X線と連続X線の発生方法の違いを解説しましたが、説明が不十分な箇所が多いため、次回以降の記事でもう少し深く説明します。
まずは、X線が発生するイメージを掴んでもらえればいいと思います。