原子核には安定なものと不安定なものがあります。不安定な原子核は、α粒子やβ粒子を放出して別の核種へ変化したり、余分なエネルギーをγ線として放出したりします。
この現象を放射性崩壊または放射性壊変といいます。この記事では、原子核を結びつける力を整理したうえで、α崩壊、β-崩壊、β+崩壊、γ線放出によって原子番号と質量数がどのように変化するかを解説します。
クーロン力と核力
以前の(原子と原子核の構造)記事で、クーロン力は電荷と電荷の間に働く力と紹介しました(図1)。

図1 クーロン力
原子核は陽子と中性子で構成されています。陽子は正の電荷をもつため、陽子どうしには電磁相互作用によるクーロン反発力が働きます。それだけなら、原子核はまとまりません。
一方、原子核程度の非常に短い距離では、強い相互作用に由来する核力が核子どうしに働き、陽子と中性子を原子核内に結びつけています。
ここで、クーロン力を物理学の「弱い相互作用」と混同しないことが重要です。クーロン力は電磁相互作用による力です。一方、弱い相互作用は別の基本相互作用であり、β崩壊における陽子と中性子の変換に関係します(図2)。

図2 核子間に働く核力
(「三体核力」の存在を世界で初めて実験で証明—関口仁子 | Science Tokyo – 東京科学大学を参考に一部改編)
図2は、核力を中間子の交換によって直感的に説明した模式図です。一方、β崩壊で中性子が陽子へ、または陽子が中性子へ変化する現象は、核力ではなく弱い相互作用によって起こります。
α線の発生
α崩壊は主に重い原子核で起こる放射性崩壊です。放出されるα粒子のエネルギーは核種ごとに異なりますが、多くは数MeV程度です。
α崩壊はウランや超ウラン元素だけに限らず、ポロニウムやラジウムなど、ウランより原子番号が小さい核種でも起こります。
なお、原子番号92のウランより原子番号が大きい元素を超ウラン元素と呼びます。
α崩壊では、陽子2個と中性子2個からなるヘリウム4の原子核(α粒子)を放出します(図3)。娘核種が必ず安定になるとは限らず、さらに別の放射性崩壊を続ける場合もあります。

図3 α崩壊
ここで絶対に間違ってはいけないことは、「ヘリウムの原子核なのであってヘリウム原子ではない」ということです。
ヘリウム原子とヘリウムの原子核の違いは図4を確認してください。

図4 ヘリウム原子とヘリウム原子核の違い
以前の記事でも解説しましたが、原子は原子核と軌道電子から構成されています。
α崩壊では原子核から陽子と中性子のみが飛び出しているため、ヘリウムの原子核と呼んでいます。
α崩壊を起こした原子核は、原子番号が2、質量数が4減った新しい原子核に変化します。
例えば、原子番号92で質量数が238のウラン(U)がα崩壊を起こすと、α線(ヘリウムの原子核)と原子番号90で質量数が234のトリウム(Th)が放出されます。
また、崩壊前の原子核を 親核種、生成される新しい原子核を 娘核種 と言います。
β-線とβ+線の発生
β線は、β-線とβ+線の2種類に分けられます。
β-線は、原子核内の中性子の数が陽子の数と比較して過剰になるとき、中性子が陽子に変化し β-線(高速の陰電子) と 反ニュートリノ を放出します(図5)。

図5 β-崩壊
図5では現象を見やすくするため、電子反ニュートリノを省略して描いています。ニュートリノは「小さいため観測できない」のではなく、電荷をもたず物質と主に弱い相互作用をするため、物質を通り抜けやすく検出が難しい粒子です。
原子核内の中性子が陽子に変化するので、原子番号が1増え、質量数は変化しない娘核種になります。
例えば、原子番号43で質量数が99のテクネチウム(Tc)がβ-崩壊を起こすと、β-線と原子番号44で質量数が99のルテニウム(Ru)が放出されます。
β+線は、原子核内の陽子の数が中性子の数と比較して過剰になるとき、陽子が中性子に変化し β+線(高速の陽電子) と ニュートリノ を放出します(図6)。

図6 β+崩壊
図6では現象を見やすくするため、電子ニュートリノを省略して描いています。
原子核内の陽子が中性子に変化するので、原子番号が1減り、質量数は変化しない娘核種になります。
例えば、原子番号9で質量数が18のフッ素(F)がβ+崩壊を起こすと、β+線と原子番号8で質量数が18の酸素(O)が放出されます。
γ線の発生
原子核がα崩壊やβ崩壊、電子捕獲、核反応などを起こした後、娘核種が余分なエネルギーをもつ励起状態になることがあります。励起した原子核がより低いエネルギー状態へ移るとき、余分なエネルギーがγ線(電磁波)として放出されます(図7)。

図7 γ線の放出
比較的長い寿命をもつ励起状態を核異性体といい、質量数の後ろに「m」を付けて表します。核異性体がγ線放出または内部転換によって、より低いエネルギー状態へ移る現象を核異性体転移といいます。γ線放出では原子番号と質量数は変化しません。
代表例の99mTcは、99Moのβ-崩壊などで生成され、約6時間の半減期で核異性体転移します。代表的に約140.5 keVのγ線を放出して99Tcの基底状態へ移りますが、99Tc自体も放射性核種であり、完全に安定な核種ではありません。
まとめ
- 原子核内では、陽子どうしに電磁相互作用によるクーロン反発力が働き、強い相互作用に由来する核力が陽子と中性子を結びつけています。
- クーロン力を「弱い力」とは呼びません。β崩壊で陽子と中性子を変換するのは、弱い相互作用です。
- α線は、陽子2個と中性子2個からなるヘリウム4の原子核です。α崩壊では娘核種の原子番号が2、質量数が4減少します。
- β-崩壊では、中性子が陽子へ変化し、電子と電子反ニュートリノが放出されます。原子番号は1増え、質量数は変化しません。
- β+崩壊では、陽子が中性子へ変化し、陽電子と電子ニュートリノが放出されます。原子番号は1減り、質量数は変化しません。
- γ線は、励起した原子核がより低いエネルギー状態へ移るときに放出される電磁波です。γ線放出では原子番号と質量数は変化しません。
- 質量数の後ろに付く「m」は、比較的長い寿命をもつ励起状態である核異性体を表します。
参考資料・関連資料
- IAEA『Nuclear Medicine Physics: A Handbook for Teachers and Students』
- U.S. Department of Energy「DOE Explains…The Weak Force」
確認日:2026年9月12日

